-月刊EQD-Vol.13
Yuichiro Hosokawa
<Vol.13>
グランドオービター(フェイザー)
<モデル発表日>
2009年2月2日
<イントロダクション>
ブランドの創始者であるジェイミー・スティルマンにEQDペダルの開発秘話やオススメの使い方などを紹介してもらいながら、エフェクター研究家である細川雄一郎(CULT)の製品レビューを通して製品の魅力を紹介していく連載『Pedal of the Month -月刊EQD-』。第13回目に紹介するのは、幅広いウネリ効果でインスピレーションを刺激するグランドオービター(フェイザー)です。
細川雄一郎(CULT)
弾き手のアイデアをすべて具現化する
全方位対応型の万能フェイザー
フランジャーのような激しさはなく、コーラスのような広がりもない……ちょっと地味でアンニュイなモジュレーション・エフェクト=フェイザー。そんなフェイザーもEarthQuaker Devicesの手にかかれば、しっかりと魅力的なペダルに仕上がってしまいます。
グランド・オービターはスタンダードなフェイザーでありつつ、その中で機能を極限まで拡大した、“痒いところに手が届きまくって快感過ぎる”ような1台です。作り出せる音色のバリエーションは異常ともいえるほどに豊富であるのに、それらの音色すべてが使える範囲に収まっていることが他のフェイザーにはない個性です。それらの多彩な音色バリエーションを実現させているのは、4つのコントロール・ノブ、ふたつのモード切り替えスイッチです。特に重要なコントロールは、Resonance、Sweepというふたつのノブでしょう。
まずResonanceは、フェイザーのエグみを足し引きするようなコントロールです。グランド・オービターは素直でクリアなフェイジング・サウンドを基本としながら、Resonanceコントロールによって、まるでフィルターかのようなエグさを段階的に足していくことができます。爽やかなフェイジングから、オートワウのようなモジュレーション、そしてそれらの中間的な音色を作ることができるわけです。
Sweepはどの帯域を中心にフェイザーを掛けるかを選ぶようなコントロールで、地味でありながらも重要な効果を見せます。12時方向に設定するとおおよそ全帯域にバランス良くかかるスタンダードなフェイザーとなり、そこから下げれば低域寄りに、上げれば高域寄りにかかるフェイザーとなります。中心帯域から少しズレた範囲にかかるフェイジング・サウンドは、名機と呼ばれるヴィンテージ・フェイザーによくある特徴で、そういった名機たちのクセを再現するコントロールとして、非常に秀逸だと感じます。
それだけでなく、Rateスイッチではモジュレーションを止めることもでき、ワウ・ペダルの“半止め”ならぬ、フェイザーの半止めサウンドを作れたり、Vibratoモードにすればユニヴァイブのようなモジュレーションを作ることもできてしまいます。
まさに、プレイヤーがフェイザーに求める機能が全盛りですが、それらの機能、音色のすべてが使えるように絶妙にチューニングされているところがEarthQuaker Devicesのペダルらしいところでしょう。最初に手にするフェイザーにも、最後に手にするフェイザーにもオススメです。
ジェイミー・スティルマン(EQD代表)
EQDの創立者であり、さまざまなバンドで演奏を楽しんでいるプレイヤーでもあるジェイミー・スティルマン。独創的なアイデアをペダルとして具現化させている彼に、グランドオービター(フェイザー)の開発背景について語ってもらいました。
もともとフェイザーは大好きなエフェクターで、以前は常にペダルボードの中にセットしていました。その時は、おもにBOSS製PH-2を使っていたのですが、今回紹介するグランドオービターのインスピレーションの源になったのは、実はROSSのフェイザーです。
ROSSのフェイザーとグランドオービターには、内部回路のフィルター・ステージにOTA(Operational Transconductance Amplifier)というICを使うなど、いくつか共通する点があります。
Rossのフィルター・サウンドには特別な魅力があって、ほどよく歪んでくれるし、レゾナンスの質感もとても良好です。ただ、コントロールの自由度があまり高くありませんでした。
そこで私は、Sweep(どの帯域にウネリのピークを設定するのか)とDepth(WetのMix)、さらにRateも2段階のスピード設定ができるように機能を追加しました。
これはちょっとした豆知識ですが、最初期の個体は大きなグレーのハンマートーン塗装の筐体で、ミックス・セクションには小さな基板が付いた設計回路になっていました。私はその箇所に改良を加えて、1枚の基板にまとまるように再設計したのですが、すでに小さい基板を追加注文していたため、せっかく再設計までしたのに古い回路設計のままで小さな基板を使い切らねばならなかったのです(当時はパーツを無駄にする余裕がありませんでした)。
グランドオービターの仕上がりにはとても満足しているので、改めて新しいフェイザーを設計しようと思ったことはありません。ペダルが完成してからは、自分の定番フェイザー・ペダルとなりました。
ファズを前段に置いてSweepを深めにかけたセッティングで弾くと、聴いた人の頭を溶かしてしまうようなサウンドになります。
<Jamie’s Settings>
Depth:フルテン
Sweep:3時
Rate:1時
Resonance:3時
Phase/Vibratoスイッチ:Phase
Rateスイッチ:1
たまにRateの数値を変えますが、基本的にこのセッティングで使用しています。
細川雄一郎(CULT)
大手楽器店にて約10年間、エフェクターの専任として勤務し、多くの著名なプロミュージシャンから信頼を集め、2016年に独立。並行して担当していた専門誌での連載コラム、各種ムック本などでの執筆活動を続けながら、ギターテックとしても活動。エフェクターのコレクターとしても世界に名を知られており、自身のエフェクター専門ウェブショップ“CULT”を2018年にオープンし、2020年には自身のコレクションに関する書籍『CULT of Pedals』を執筆、リットーミュージックより出版された。ペダル以外にハンバーガーをこよなく愛し、ハンバーガーに関する書籍などにも登場することがある。
尾藤雅哉
2005年にリットーミュージック『ギター・マガジン』編集部でキャリアをスタートし、2014年からは『ギター・マガジン』編集長、2019年には同誌プロデューサーを歴任。担当編集書籍として『アベフトシ / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT』、『CULT of Pedal』など。2021年に独立し、真島昌利『ROCK&ROLL RECORDER』、チバユウスケ『EVE OF DESTRUCTION』、古市コータロー『Heroes In My Life』の企画・編集を手がける。2024年には、コンテンツ・カンパニー“BITTERS.inc”を設立。
西槇太一
1980年東京生まれ。8年間ほどミュージシャンのマネージメント経験を経て、フォトグラファーに転身。スタジアムからライブハウスまで、さまざまなアーティストのライブで巻き起こる熱狂の瞬間を記録した写真の数々は、多方面から大きな支持を集めている。またミュージシャンの宣材写真やCDを始めとする音楽作品のジャケット、さらには楽器メーカーの製品写真の撮影なども手がけるなど、音楽シーンを中心に精力的に活動中。また自身のライフワークとして撮り続けている“家族写真”にスポットを当てた個展も不定期に開催している。