-月刊EQD-
Yuichiro Hosokawa
<Vol.10>
ザ・デプス(アナログオプティカルビブラート)
<モデル発表日>
2013年
<イントロダクション>
ブランドの創始者であるジェイミー・スティルマンにEQDペダルの開発秘話やオススメの使い方などを紹介してもらいながら、エフェクター研究家である細川雄一郎(CULT)の製品レビューを通して製品の魅力を紹介していく連載『Pedal of the Month -月刊EQD-』。第5回目に紹介するのは、立体的な音の揺れを生み出すザ・デプス(アナログオプティカルビブラート)です。
細川雄一郎(CULT)
拡張された機能を備えた
現行モジュレーション・ペダルの最適解
ギター・サウンドに独特なウネリ、揺らぎを加えることができるペダル=ザ・デプス。ユニヴァイブ系に属するモジュレーション・エフェクトですが、その中でもかなり異質な音色を生み出します。
そもそもユニヴァイブというのは、1960年代の後半にシンエイ(Shin-ei)という日本のブランドが開発したエフェクト・ユニットです。ヴィブラート、トレモロ、フェイザーが合わさったような独特の効果で、クリーンで使えば独特な浮遊感のある揺らぎに、歪ませたサウンドに合わせて使えばドクドクと脈打つようなサイケデリックな音色を作ることができるのが特徴です。特に1969年に行なわれた音楽フェス“ウッドストック”において、ジミ・ヘンドリックスがギンギンに歪ませたギターとユニヴァイブを使ってアメリカ国家を演奏したシーンを思い浮かべる人も多いことでしょう。
このザ・デプスは、そんなユニヴァイブの音色に触発されて生まれたペダルですが、オリジナルのユニヴァイブよりも深いウネリ、そして拡張された機能を備えています。揺れの深さ調整するIntensity、速さをコントロールするRateに加え、VoiceとThrobによって揺れ自体の特徴を細かく調整することができ、さらにLevelを使えば音量をブースとすることも可能です。これら5つのノブを使えば、さまざまなシチュエーションに合わせて最適なモジュレーション・エフェクトを作ることができるでしょう。
ザ・デプスは、どのようなセッティングにしても低音から高音までしっかりと音がウネるので、まるで人の声のような深いモジュレーションを生み出すことができます。そしてドライブ・サウンドと併用すれば、他のモジュレーション・エフェクトでは得ることができない“エグみの強い音色”を得ることが可能です。数あるモジュレーション・ペダルの中でも“何かひと癖が欲しい!”という場合、僕はザ・デプスをオススメします。
ブルームスは、プルームスをベース用にチューニングしたペダルで、基本的な音色、機能はプルームスと同様ながら、低域の太さが増強され、歪み量も少し多くなっています。ベースで太いオーバードライブ・サウンドを作る時に使える一方、実はギターとの相性も良好で、プルームスよりも広いレンジ感のあるオーバードライブ・サウンドを作ることも可能です。
回路の面から見ても、“ただのTSコピーは作るまい”とするオルタナな精神を随所に感じます。EQDのペダルには、そのようなオルタナティブな精神が反映されているのかもしれません。
ジェイミー・スティルマン(EQD代表)
EQDの創立者であり、さまざまなバンドで演奏を楽しんでいるプレイヤーでもあるジェイミー・スティルマン。独創的なアイデアをペダルとして具現化させている彼に、ザ・デプスの開発背景について語ってもらいました。
表情豊かな“揺れ”を生み出す
EQD流のユニヴァイブ系ペダル
私はずっと長い間、シンエイのユニヴァイブ・サウンドの大ファンでした。なので独特なエフェクト効果にフォーカスを当てつつ、ユニヴァイブのクローンにならないように気をつけながら作り上げたペダルが、このザ・デプスです。
現在の最終的な仕様に落とし込むまでに、たくさんの(本当にたくさんの)基板をデザインしました。このザ・デプスは、シンプルなコントロール・レイアウトなのに表情豊かなサウンドを生み出すことができるので、私は今でも仕様と製品の仕上がりに満足しています。
そして筐体に描かれた特徴的なイラストは、Matt Horak(マーベル社でスパイダーマンやヴェノム、X-メン、パニッシャーなどを手がけたコミッククリエーター。一時期EQDに在籍)が、初めてデザインしたペダルでもあります。
音色は暗く、サウンドは非対称的に可変するので、ザ・デプスという名前は、このユニヴァイブ・スタイルのペダルに合っていると思います。
<Jamie’s Settings>
Intensity: 2時
Voice: 11時
Rate: ゼロかフルテン
Throb: フルテン
Level: おおよそ12時
どんな楽器にも合うと思いますが、ストラトキャスターのフロント・ピックアップを使って、クランチ気味に設定したアンプでザ・デプスを鳴らすと、あの“クラッシックなトーン”を得られますよ。
細川雄一郎(CULT)
大手楽器店にて約10年間、エフェクターの専任として勤務し、多くの著名なプロミュージシャンから信頼を集め、2016年に独立。並行して担当していた専門誌での連載コラム、各種ムック本などでの執筆活動を続けながら、ギターテックとしても活動。エフェクターのコレクターとしても世界に名を知られており、自身のエフェクター専門ウェブショップ“CULT”を2018年にオープンし、2020年には自身のコレクションに関する書籍『CULT of Pedals』を執筆、リットーミュージックより出版された。ペダル以外にハンバーガーをこよなく愛し、ハンバーガーに関する書籍などにも登場することがある。
尾藤雅哉
2005年にリットーミュージック『ギター・マガジン』編集部でキャリアをスタートし、2014年からは『ギター・マガジン』編集長、2019年には同誌プロデューサーを歴任。担当編集書籍として『アベフトシ / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT』、『CULT of Pedal』など。2021年に独立し、真島昌利『ROCK&ROLL RECORDER』、チバユウスケ『EVE OF DESTRUCTION』、古市コータロー『Heroes In My Life』の企画・編集を手がける。2024年には、コンテンツ・カンパニー“BITTERS.inc”を設立。
西槇太一
1980年東京生まれ。8年間ほどミュージシャンのマネージメント経験を経て、フォトグラファーに転身。スタジアムからライブハウスまで、さまざまなアーティストのライブで巻き起こる熱狂の瞬間を記録した写真の数々は、多方面から大きな支持を集めている。またミュージシャンの宣材写真やCDを始めとする音楽作品のジャケット、さらには楽器メーカーの製品写真の撮影なども手がけるなど、音楽シーンを中心に精力的に活動中。また自身のライフワークとして撮り続けている“家族写真”にスポットを当てた個展も不定期に開催している。